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新潟家庭裁判所 平成5年(少)745号 決定

少年 N・N子(昭53.4.17生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、平成5年6月3日午後10時30分ころから同日午後11時30分ころにかけて、新潟市○○×丁目××番××号の自宅において、弟を些細なことではがいじめにしたことで母親に注意されるや、激昂し、母親に対し、その腕を捻ったり、背中を手拳で殴打するなどの暴行を加えるなどしているもので、保護者の正当な監護に服さず、自己又は他人の徳性を害する性癖を有するもので、このまま放置すれば、将来暴行、傷害等の非行を犯すおそれが高いものである。

(適用法条)

少年法3条1項3号イ、ニ

(理由)

少年は、中学校に入学後不良顕示的な先輩たちとの交遊を深める中で、学校内で力を誇示したいがため対生徒暴力を頻繁に繰り返すようになったほか、万引きなどの非行を行ったため、観護措置の上、平成4年10月2日、「絶対に友達や先生に暴力を振るわない。窃盗や恐喝はしない。」旨誓約の上試験観察に付した結果、学校等において同級生を呼び出して威嚇するなどの不穏な言動がなかったわけではないが、以前のように無差別に他人に暴力を振るったり、窃盗等の非行は見られなくなったことから、失った信用を回復し周囲の人に受け入れてもらうには日々努力するしかない旨諭して、平成5年5月14日、保護観察に付した。ところが、学校にはここ1年余り学校の内外で問題行動を繰り返してきた少年を受け入れてくれる教師も生徒もいなかったことから焦燥を深めた少年は、友達になってもらいたいがために特定の生徒に執拗につきまとったり、気に入らない教師に暴力を振るったりしたほか、学校生活で蓄積した不満を晴らすため上記のような家庭内暴力を行うに至ったもので、家庭内暴力に限らず、学校内でも暴力事件を犯すおそれが高いことが認められる。

そして、〈1〉少年が、少年調査票や鑑別結果通知書に指摘の通り、年齢相応に社会性が身についておらず、自己中心的で、共感性にも乏しいことなどから、周囲の人と良好な人間関係を形成することができないという資質的な問題を抱えて暴力事件を頻発させてきていること、〈2〉少年と在籍中学校の教師や他生徒との人間関係は簡単には修復できない程拗れてしまっていること、〈3〉学校等において周囲の人に受け入れてもらえない結果、被害感や対人不信感が先に立ち、少年の内省が深まりにくい状況にあること等を考慮すると、もはや社会内で処遇していくことは困難と言わざるを得ない。

このような少年に対し、少年の両親は、今一度社会内で更生の機会を与えて欲しいと切望しているが、これまでの経過に照らせば少年の両親に少年の問題に応じた適切な指導、監督を期待することはできない。

したがって、この際、少年をこれまでの生活環境から切り離して、少年院に収容し、安定した環境の中で、前記の資質的な問題を克服し、社会性等を身につけさせるのが相当と考える。なお、少年は高校進学の希望を持っており、少年の処遇にあたっては、しかるべき教科教育を行うとともに、高校受験がかなうよう仮退院の時期等も配慮していただきたい。よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項、少年院法2条2項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 鈴木桂子)

処遇勧告書〈省略〉

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